連載 続古三線に魅せられて〜今後の三線製作の課題

〜これからの三線製作の課題〜

三線の製作は実に骨の折れるものである
製材〜乾燥〜着手〜棹完成〜塗り〜組み立て
これら工程を手を抜かずして、創造性を持って取り組む必要がある
手抜きをすれば(想いという観点も含め)、必ず弾き手に伝わってしまう。
だから職人は肉体も精神も緊張を保たなければならない。そのため、それに合う休養、心の保養も必要である。
しかし、ここでわたしは代弁する必要があるのですが、職人がその心身の余裕が得られず、結果、その道を断念せざるを得ない方を何名といらした。

今回は三線製作をされる職人様側の視点と、今後の課題を取り上げていきたいと思います。宜しければお目通しください。

⭐︎その報酬の見直しの必要性

人気作家様や商売人として備えている職人様であれば、上手に自身を表現し、あらゆる方法で自慢の作品を紹介する能力を持っている。
それは大変喜ばしいことである。
しかし、製作に力を注ぐあまりに、商売が成り立たない職人様もいらっしゃる。どんなに時間をかけ、魂を込めても、なかなか弾き手に良さを伝えられない。職人として、これほど苦しいことはありません。自身の作品が褒められ、讃えられ、喜ばれることで、自分の人生の喜びの表現とすると決めてその道を選ばれたからである。
何故なら私自身もそれに憧れ、手がけ、売り歩いた苦労というのを、少しばかりですが経験があるからに他ありません。ですからどれだけ職人様が楽器を愛していらっしゃるかが痛いほど分かる。
職人というのは自分で評価を決める。ただし、自己評価が低い方はそれだけその報酬も低く設定されてしまう。人によっては、棹一本あたりの制作費が数千円というのもある。私が知っている中で、20年ほど前の三線ブームの時の話だが、棹一本で4000円という方もいた。安いからと言って手は抜けず、時間と納期の負担が増してしまう。急を要する用や体調によっては作業が進まない。よしと意気込んでも、思い通りに上手く運ばないのが人生というものでございます。それからひどく体調を崩し、希望が見出せず、作品の質も下がり、値段を叩く業者もある。品物を先に取り後払いと言って、賃金を払わずにいる業者もいる。そんな悪循環の中にいる職人様もいるのです。
それに続き、大量生産で作られる三線と、上がることのない報酬。
高熱費や経費は上がっているのに、報酬はなかなか上がることがない。
それをどう見過ごしていられるでしょうか?
その問題と重ねて、前回お伝えした、⭐︎失われていく三線材 に書いた内容も含め考えてみてください。そうです。
黒檀が無くなります。
だからといって軽量とされるその他の材を軽くみてはいけないのです。
材が黒檀であってもユシであっても、または一番低いランクとされるラワン材であっても、職人様がかける苦労に変わりはありません。
ですからわたしは思うのですが、これからは材によって三線の価値を決めるのではなく、一つの作品に込められた想い、芸術的表現力、人間性、その全てを評価される三線であるべきではないかと。
そして、職人様へ与える報酬もこれまでの倍をお支払いすることも大切です。
なぜ今まで、これだけ多くの三線業界が流通して来たのにも関わらず、誰もそこに取り組みなさらなかったのでしょうか。
言うのは簡単ですが、そこに向かうためには山積みの課題があることは十分承知のことです。しかし、ここを避けては通ることは不可能です。
今こそ意識を変化し全体で取り組まなければ、三線の流通自体が成り立たなくなってしまうのは目に見えている。
まず三線の価値を見直し、提供された資源に感謝し、丁寧に作られたもので、作品性を上げ、そしてお客様に十分に喜んでいただける一丁を、課題にして取り組んでいきたいと考えております。
本当に変革していくのは、これからなのです。
どうか、三線を、そして全ての職人様を温かい思いで見守っていただけますと幸いです。
長々と失礼いたしました。最後までお読みいただきありがとうございます。



胴巻屋

選りすぐりのヴィンテージ〜名作三線と、手作りの胴巻を扱っています。著書「古三線に魅せられて」

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