逆反り三線を作った男

しばらく前に話題になったある話。
天の曲がりを逆反りにした作品を作った職人がいた
。通常の形よりもそのぶん、材も計算して製材しなくてはいけない。
職人は真剣だった。大真面目に作ったのだった。
しかし、世間の目線は冷ややかだった。
その逆反り真壁型三線を見るなり、
'気持ち悪い''天邪鬼''今に天のバチが当たるぞ'と囁いた。
そんな風だったから、逆反り三線は全く売れず、やがて男の引退と同時にその型も消えていった。
決して世間の批判を恐れてはならない。
恐れて気にするあまりに、新しい三線の創造性も、現在のように、消えて行ったのですから。
今の市場を見ても、多くの三線が、同じような視点で製作されている。
左右対称=バランス を重視している。
もちろん、それは素晴らしい技術で、とてもとても、作品作りは難しいのですが、一見して違う角度から見ると、機械仕掛けである。
手になかなか馴染まない。個性が薄れてしまい、どれも同じもののように感じてしまうのは、私だけではないだろう。
まして、現代名工の作を手本としたり、広まっている図面を基にしたのなら、なおさらのことである。
焼き物や絵画の世界はなぜあのように自由な表現をゆるされていながは、三線は一部の'お堅い'思想に着目して、かつての自由さを失ったのだろう。今一度そのことを考えてみる必要があるのではないだろうか。
歪んでいてもよい。人と違っていて良い。
いわゆる 鋭いシャープな作り だけが良さではない。
もっと自由になろうではないか。
そしてユーザーも、もっと自由を求めていこうではないか。

胴巻屋

選りすぐりのヴィンテージ〜名作三線と、手作りの胴巻を扱っています。著書「古三線に魅せられて」

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