水のチカラ 先人の知恵

三線に使用する材を水に浸すというのは正解だろうか。
この疑問を解決するためには、三線業界から一歩外に出なければならなかった。
なぜなら「え?何を言っているんだ。乾燥が大切なのに水に浸けるだって?気が触れたのか」と叱られたからだった。
しかし、県産材を扱う材木店の創業者に聞くと、やはり昔は材を伐採後に数ヶ月の間川の水に浸して完全に不純物(アク)を抜いて、それから天日干しをしたと証言された。やはり、制作においても完成しての音色においても水は大切な役割を果たすのであった。
そこで私は海につけてみることにした。誰も立ち入ることない南城市の海の岩に材をくくりつけて、それを海水に沈めた。
数ヶ月後みてみると、海の塩が強いせいか、乾燥の段階で割れがひどくなってしまった。
そこで川や田んぼにつけると、それほど刺激が強くないのか、うまくいったのだった。
ヴァイオリンの名器を調べてみると、材の微生物が豊富だという研究結果がある。
これは、材を運ぶ際船に丸太をくくりつけて川を渡っていたというのが正解だったらしい。
松の木は三線に不向きであった。それは松脂が出て悪臭を放ってしまうからだ。三線にして仕上げてもたちまちクレームがきて大量に破棄されるというのがあった。
これも、じっくりと時間をかけて、水につけやにを抜いたあとなら問題なく使用され続けたのだと言える。
これは現代の産業の在り方の影響でしょうか。やはり生産の工程に焦りが出るためと考えられる。
アイヌの人たちは材を切るときには満月の日を選び、また切り方もあって、人の人力で強引に切るのではなく、自然の力も一緒になって切ったほうが良いと信じられてきた。私たちの左脳で考える知識を超えた不思議な力というのは確かにあるのかもしれません。
これはあまり人にも話したことはありませんが、一時期ですが琉球アユを飼っていたことがありました。
一昔前はホームセンターの方と仲良くなると、アユを山原から獲ってくれてそれを打ってくれました。
そして水槽で大切に飼って、約半年近く経ってからその水を使って三線の材を浸していました。
使用するのはとても良い湧き水などですから、毎週汲んでくるのはとても大変な作業でした。それを何度も繰り返します。
するとどうでしょう。例えば塗りをしていない捻りのある三線の棹を、その水につけてみてください。
二日ほどしてみると驚かれるでしょう。ひねりは直っていきます。根気のある方はぜひ試してみてください。

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