連載 続古三線に魅せられて〜失われていく三線木材

お世話になっております。
今回は少し込んだ話題を取り上げたいと思います。三線棹に用いられる貴重な材 についてです。
この話題に関しては、なかなかユーザー様へはタブー扱いされているような気がしております。しかし、ユーザー様も今後の材の問題に関しては知っておくには十分価値のあることで、三線を愛する思いあっての愛弦家様ですから、私の伝えたいことをここに記載いたします。為になる情報となりますように祈ります。宜しければお目通し下さい。

これからお話する話題は、本の中では掲載できなかった記事になります。
私が三線業に携わった当時、すでに沖縄県産のユシ木は入荷困難になる、との話が出ておりました。しかし、求めれば材は比較的容易に手に入っていたため、何処か遠い話なのだろうという感じが市場全体にあったように思います。その当時は、ユシは黒木よりも下のランク(その当時のランク付の呼び名でした。私はこの呼び方は好きではない)とされており、黒木は高いから買い求めやすいユシ木の三線がお得、といった感じでありました。県産のユシで作られた三線は、下は3万円〜 上は6万円ほどで買えたと記憶している。しかし、那覇の琉球楽器またよしさんからも、「これからは必ず材が無く時がくるから、気をつけなさい」と忠告されていました。
それから間もなくして、県産ユシ木材は全く入手できなくなった。そのかわりに、鹿児島のユシはまだ残っているとして、鹿児島から大量に買い付けてくる方がいました。やがて三線が県内外でブームとなり、材は次から次へと低価格合戦の渦にのまれながら、良材はスピードを上げて大量に量産されていました。私の知る限りですが、ある三線店では一ヶ月の売り上げが数千万円というお店も何軒とありました。大袈裟ではなく、これは事実です。まさに鰻上りというものです。いったいこんなに買われた三線はどこに流れているのだろうと目を疑うほどに、連日出荷が続いていたのを何度も目撃しました。県内外関わらず、都心にも三線屋が並び出していまして、景気が上向くのは喜ばしいことと感じました。また、あまり三線の事に詳しくない方もその起業に乗り出し、看板をたてる店も多く出ました。
しかし当然のことですが、そのしわ寄せが半年とたたぬうちにやってきます。
量産された材に捻りや歪みが起こり、返品や修理依頼の問い合わせが相次いだのです。なぜなら材の乾燥が甘い状態で作ったために、棹に動きが出るためです。また、海外製の比較的安い三線の歪みは最もひどく、修正不可能な物も多くありました。
私はある三線店の下、一切の作業を任されており、そのような棹を修理して綺麗に戻すという作業も多く、大変に骨の折れるものでした。やってもやっても山のように来る修正。組み立て調整もしっかりされていないどころか、ひどい場合は接着剤で棹と胴をくっつけられている始末でした。これだけの三線をどんなに修正しても、使い物にならず無駄になってしまうのかと思うと、やるせない思いにかられたものです。同じような気持ちになられた職人さんもいらっしゃるでしょう。直してお返しできる、返品を受け付けられるのならまだ良いのですが、一番追い込まれたのは、修理ができない販売店でした。対応に追われ、閉店を余儀なくされた店舗もたくさんありました。
このように、あれほどあったユシ材を含む材料の多くが失われてしまったのです。その後、私はその作業から離れ、その後自分の置かれた立場を何度となく悔い改める思いでした。
いったいどのようにすれば良いのか。大好きな三線だからこそ、これからの事を改めて、深めていくにはどうしたら良いかの自問自答が続いたのはいうまでもありません。

実際話はまだまだ深いのですが、何故ここまでくどくお話するのかといいますと、ユシ材に続き、現在懸念されていますのは、黒檀材(黒木を含む)の伐採問題と入荷困難という問題です。
胴巻屋のYouTubeチャンネルでも何度か話題に出しておりますが、沖縄産、八重山産はもちろんのこと、比較的入手しやすいと言われていた南洋産黒木も、残り僅かです。いや、もう無くなると言い切っても良いです。森林伐採に繋がるとの懸念から、輸入制限もかかったことも原因の一つとされています。
過去の反省を経験として、私たちはこの三線材の問題と認識をしっかり変えていかなければなりません。

一般ではほとんど入手不可能な八重山産黒木に続き、南洋産も大変貴重な材となっているということを、今一度ご理解いただきたいと思い、ここに記載させていただいた次第です。
黒木の産地に価値の基準が設けられるとされた時代は終わりました。今あるだけの資源を大事に活用できるよう、共に努めまてまいりましょう!

今回の話題に続きまして、次回は三線製作と市場の現状を考えていきたいと思います。決して重たい話題と感じず、より良い改善に努めるよう、私自身も考え行動していきたいとの思いです。どうかご理解願います。長い文章でしたが、お目通しくださりありがとうございます。

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