琉球の大便所は独特なもので、短形の石囲いに豚を養っている。
その一部に用便をするに使う穴がこしらえられており、そこでしゃがんで便を足すと、
囲いの中の豚が、落とした便を食う仕組みになっている。
便を落とすと豚がやってきて一滴も残さず舐め尽くしてしまう。
豚は人が便にくる気配があると、鼻を尖らせ、ぐうぐうと喜色を現す。
用便に来た人が便秘でもしていて、放屁一発で立ち去ってしまうと、豚は失望の表情をする。
小便は戸外の庭の隅、または石垣などでたす。
溝は排水が悪くて悪臭がひどい。娼家ではこの悪臭を消すために、丁子風呂町をたく。
これは沈香という香料七種類をアルコールに浸したものを、小灯の上に置いて蒸発させるものである。とても良い香りがする。
また庭前には大葉蘭、茶葉蘭をおき、軒には松葉蘭を吊り下げ、三段花などの美華を植えて客を慰めている。
遊客がジュリを呼ぼうと思って、娼家の玄関の門戸を叩くには、一種の慣行がある。
門戸を叩くには強くトントンとたたいてはならない。
ただ2、3回指頭でコツコツと叩けば良い。
もし猛烈に連打すると、悪者か酔客と見て戸締りを厳重にして、かえって迎え入れてくれない。
コツコツと叩くと、中に見番の女がいて、「ターヤミセービーガ」(どちら様ですか?)
という声があるので、客は自分の名前を告げ、相手のジュリの名を言うと、ジュリがすぐ門戸を開いて顔を出す。
「メンソウチイタイ」(いらっしゃいましたか、の意味。最後のたいは、女性が使う)と挨拶してくれる。
久しぶりにあったとしたら「ウンジョウ、ヌーガ、メンソーラン。マーヌ、マーンジ、グンボーシミソーチャガ」(あなた、最近お見えにならないが、どこの娼家で浮気しているの)
などと、恨みを漏らす。
客が、いやグンボー(数人の客を受け入れるジュリの意味=他所で浮気の意味としても使われていたようだ)などはしてないよ、最近は多忙だからさ、と弁解じみたことを言うと、
「ウンジョー、バッパイイキガ。ユクシビケイ、イミセール」(あなたは嘘つき男、嘘ばっかり言って)などと小言を言う場面も見られる。
続く
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